2020年1月5日日曜日

2019年個人的Game of the year

2019年、平成の終わりと令和の始まりを同時に迎えた日本。
それと同時にコンソール・PC含めて多数の期待作や大作ゲームが登場した。
始まりである1月から超大型タイトルが目白押しだった。
それは海外タイトルだけでなく、日本のタイトルも多数。
2019年は比較的に大型タイトルが多かったし、超大作の年とも言えるだろう。
だが、光があれば闇もある。
陰と陽。
大型タイトルあるところにインディーズゲームもあり。
超大作の年と印象付けられるが、それと同時にインディーズが強い年でもあった。

というわけで毎年恒例、2019年に発売したゲームではなく、
2019年に自分が遊んだゲームタイトルの中から傑作を選ぶ、
ジャンル毎に個人的Game of the Yearを選出していきたいと思う。


  • ベストラヴゲーム:Wattam

2014年12月、突如として発表された奇妙なタイトル。
それはあの「塊魂」や「のびのびBOY」を生み出したクリエイター
「高橋慶太」が作り出した新たなタイトル。
トレーラーが公開されても全く理解出来ない内容から、
極々一部で密かに注目されていたWattam。
続報が一切なく悶々としつつも日々を過ごし、早5年。
ついにあの奇妙なゲームが発売される時期となった。


「塊魂」では塊が全てを巻き込んでいくのが楽しかった。
だが、全てを巻き込んでいけば最終的に無に到達する。
あらゆる存在を破壊し、消滅させる虚無のゲームだと高橋慶太は語った。

では虚無にならない、生み出すゲームならば…?と考えたのが「のびのびBOY」だ。
「のびのびBOY」では芋虫のようなキャラであるBOYが、
人や物を食べて大きく・長くなっていき、長さをインターネット経由でアップロード、
全世界のプレイヤーがBOYを伸ばしていき、最終的に宇宙全体を一周するのが目的だ。
マップにある人や物を全て食べつくしても、自動生成で生み出される次のマップに移動する。
そして食べて伸ばす、たまにうんちして全部吐き出したり(消化はされずにそのまま出てくる)
伸びた体をいじって遊んだりと、ゲームらしいゲームではなく、
とても玩具らしく、ゲームを遊ぶというよりは積み木を遊ぶような感覚だった。
余談ではあるが、数年前に全プレイヤーの努力の甲斐あってEDが解禁された。
個人的にはゲーム史に残るEDだと思うので、興味がある方はYoutubeで見てほしい。


閑話休題。
ゲームといえるのか懐疑的ではあるが、とても楽しい玩具として登場した「のびのびBOY」
飽きる人は一瞬で飽きるが、好きな人には深く刺さり延々遊んでいるようなタイトルだった。
「Wattam」も既存のゲームにあるようなゲームプレイとは全く程遠く、
類似しているようなタイトルは存在しないのではないだろうか?


「Wattam」は全てを失い、虚無となった世界のお話だ。
主人公は町長となって、虚無となった世界を駆け巡り、色々な住人の悩みを聞く。
そして町長は住民の頭の上に乗ったり、一緒に手を繋いだり、
住人同士で手を繋ぎ合って輪になって回ったり。
時にはうんちと一緒に笑って爆発したりする。
プレイヤーからは意味はわからないが、最後まで遊べばその意味もわかる…のか…?


今までの高橋慶太作品とは違って、本作はストーリー要素が強い。
それまではゲームの為のストーリーではあったが、
今作はストーリーの為のゲームだ。
「塊魂」、「のびのびBOY」と来て、「Wattam」が一番メッセージ性が強い。
本作のメインテーマはあえて語らないでおく。
そしてゲームプレイ自体も一番クセがある。
尖りすぎていて万人受けも難しい。
それでも類を見ないゲームプレイとメッセージ性のあるストーリー。
できれば事前情報は入れずに頭を空っぽにして”最後”まで遊んでほしい。
結局の所、これはある種、究極のファンゲームなのだ。


  • ベストフレンドゲーム:ポケットモンスターブラック/ホワイト

まず最初に言っておきたいのが自分はポケモン否定派である。
ポケモンは一人用のRPGとしては大変面白く、遊びごたえもある楽しいゲームだ。
しかし、金銀から努力値の概念を知った時にとても驚いた。
それと同時に自分はポケモンに対して幻滅してしまったのだ。

日本に住んでいる人なら恐らくではあるが、
例えルールを知らなくても将棋は一度くらい遊んだ事はあるのではないだろうか。
あのゲームはとても優秀で、お互い同じ手駒、同じ状況から開始するのに、
何度遊んでも違う局面を迎えて飽きさせない展開が待ち受けている。
対戦ツールの目指す理想のゲームだろう。

さて、それに対してポケモンはどうだろうか。
対人戦を行うには努力値・個体値を厳選して育成しなければならない。
途方も無い時間をかけて、それも6体も。
幅広い戦いをする場合によればもっと必要だろうか。
何百時間もかけてようやく対戦する”準備”が整うのである。
別に対戦がしたいだけならガチらずに普通に戦えばいいじゃん。
という意見もあるかもしれないが、そういう物・環境が存在するという事は、
皆がそれを行って対戦に挑んでくるということ。
つまりは上記の物を行わないと同じ土俵にすら立てない。
ポケモンシリーズの対人戦は対戦ツールとしては酷い設計をしているという事。
勿論個体値や努力値自体は否定しない。
ポケモンは生き物であり、それぞれが個性を持っていて違う生き物という事を言いたいのだろう。
しかしそれが対人戦に影響を及ぼすのがまずかった
根本的に対戦ツールとしての設計がおかしかった。
先程も言った通り、対戦ツールとしては将棋を目指すべきだった。
そういう理由もあり、ポケモンは第三世代以降触ったことがなかった。


そんなこんなで時が過ぎて、ポケモン好きなフレンドから一言もらった
「ーポケモンブラックホワイト遊んで❤」
大好きなフレンドから言われたら拒否出来ない、
腰は上がらないのだが、遊ぶ事となった。

前置きは長くなったが、
これだけ凝り固まった自分の価値観を打ち砕くポケモンがそこにあった。
かなり古い作品なので、ネタバレ全開で語ろうと思う。

今作、「ブラック・ホワイト」ではメッセージ性がとても強い。
直球で言ってしまえば”人とポケモンの共存”、人と異形の共存の話だ。
最初の街で登場するポケモン解放運動を行っている組織、プラズマ団が、
「ポケモンは人に飼われて幸せなのか?」という問いをぶつけてくる。
オブラートに包まず直接的にだ。


ライバル枠であるチェレンは力を渇望している男で、
主人公に勝つ為にポケモンを、道具…力としてしか見ていない。
何度もライバルとしてぶつかり合う中で、どんどん力を求めて溺れていく。


そして緑髪のロングヘアーの謎の男”N”、彼もポケモンを開放するプラズマ団と同じ思想を持ち、
主人公に何度も問いかけを行ってくる。
もし主人公にポケモンと共存出来るという意思・資格があるのなら、と
本作の伝説のポケモンであるゼクロム・レシラムを呼び寄せる事が出来るアイテムを渡してくる。



Nはその片割れのアイテムを持っており、自分がポケモン達を開放する願いが成就する時にゼクロム・レシラムの片割れが降臨すると語っており、
その時に主人公が意思を示せるかという事を知りたがっていた。

ポケモンを道具としてしか見ていないチェレンや、ポケモンを悪用して悪事を働く人々。
そんな人達を旅で見てきた主人公はそれでも何も答えない。
旅を続けて、プラズマ団を壊滅させる為に主人公はプラズマ団のアジトに突入する。
そこでNはプラズマ団首領の息子である事が明らかになり、
主人公はNの部屋に入る事となるのだが、
その部屋は…ポケモンの人形などがおいてあり、
まるで小さな赤ちゃんが居るような部屋だった。
Nはポケモンの開放を願っている、何故ならば本当に純粋な子供のような気持ちでポケモンを想っているから。
だから彼はポケモンの為にポケモンを開放する、純粋な願い。

アジトの最奥でNが待っていた。
主人公が持っていた伝説のポケモンを呼ぶアイテムは未だに何も反応しなかった
Nは語る、これまで見てきた世界でポケモンはどんな扱いを受けてきたか、
ポケモンはどう思っているのか、彼らは不幸だ、だから自分がポケモンを開放すると。
そしてNは伝説のポケモンの片割れを召喚した、彼の願いが成就する時だった。
しかし、その時に主人公の持っていたアイテムも反応し、伝説のポケモンがここに2体揃った。
ここが旅の終着点。
くうううう~~~~~~~~~熱ゥィィゥい!!!
物語も最終盤の終盤で初めて伝説のポケモンが登場し、伝説のポケモン同士でのバトルだ。
燃えないはずがない!

主人公の勝利で戦いが終わり、Nは何故自分が負けたのかがわからなかったが、
主人公の連れているポケモン達を見てその理由がわかった。
何故なら、主人公の連れているポケモン達は、
主人公と一緒に居て楽しそうに嬉しそうにしていた、とても幸せそうにしていたのだ。
これまで見てきて、様々な問いかけをされていたが、
そんなものは無意味だった。
自分と自分のポケモン達の存在そのものが既に、人とポケモンの共存の可能性を示していたのだ。
そんな主人公の姿を受けてNもチェレンも考えが変わったのだ。


さて、ポケモンのみならずペットなどの動物でもそうだが、
人間に飼われて本当に幸せなのか?人とわかりあえるのだろうか?
ある種普遍的ではあるが、いつかは触れないといけない問題ではある、
だが敢えてポケモンでこのテーマに切り込み、最大限の回答を提示した事実が素晴らしい。
任天堂がこんなに深く切り込むとは思わなかった。
冒頭で語った対人ツール問題は存在するが、
それ以上にこのテーマを扱かった任天堂に拍手を送りたい。
GOTY企画の中でレビューというか最早感想を書きなぐるというのは異例の行為だが、
こんなに素晴らしい作品を教えてくれた”彼女”にお礼も込めてこの場を借りる。
ありがとう。

  • ベストロールプレイングゲーム:Bloodstained:Ritual of the Night

2014年、衝撃のニュースが舞い込んできた。
悪魔城ドラキュラシリーズのディレクターである”五十嵐孝司”が独立!
Kickstarterで2D探索ARPG「Bloodstained」を発表!


元々探索型である悪魔城ドラキュラシリーズが大好物で、
もう何年もの間シリーズが動いていない状況だった。
続編は見込めない物と思っていた。
そんな時に「Bloodstained」が発表された。
Backerにならないという選択肢はなく、$100出資する事となった。
しかしそれからというものの続報もあまりなく、DEMOも2回提出、
日本語版は延期など様々な出来事と忍耐があったが、
Kickstarter開始から5年半近く経ってようやく夢だった作品を遊べる事となった。


5年待った出来であって、とても嬉しい。
ゲーム自体のレビューは以前こちらの方で行っているので見てほしい。
ゲーム内容は今までの作品と同じく安心して遊べる、
メトロイドヴァニアを名乗るゲームを全て切り捨てて王者として君臨する出来だ。
今までのメトロイドヴァニアは偽物と言わんばかり。
というよりはメトロイドヴァニアという名のメトロイドばかりだ。
そんな中、本家本物がIGAヴァニアとして名乗りを上げた。
とても楽しむことが出来た。


開発速度はとてもゆっくりだが、これからまだDLCも予定されており2020年もまだ受賞の可能性はある。
個人的にはGOTYも上げたいのだが、終盤少し息切れしたりなどの問題があった。
そういう意味ではGOTYというよりは部門での受賞というような感じもあり、
この立ち位置で落ち着いた。

  • ベストコンバットゲーム:Sekiro:Shadow Die Twice

皆大好きフロム・ソフトウェアの最新作。
平成最後に現れたとんでもない傑作、尚自分は令和の時代に遊んだ模様。
2016年の3月、「Dark Souls3」が発売された。
それはフロム自身による「Demons Souls」から続くソウルシリーズの終焉を描く作品であり、
それはフロムからソウルシリーズに送る鎮魂歌だった。
ソウルシリーズが昨今のゲーム業界に与えた影響はとても大きく、
多くものフォロワーを生み出していった。
ソウルシリーズのエッセンスを取り入れた物から、まるまるパクリとも言わんばかりにそっくりなデザインのものまで…
他のゲーム会社が「Dark Souls」そのままだったり、それに劣るような作品が出ていた中
フロム・ソフトウェアが次なる一手として打ち出したのはソウルシリーズのベースに新たな次元へと昇華させる一作だった。
他がようやく「Dark Souls」の面白さに近づきつつある状況で、
フロムは他のフォロワー達が追い付いてこれない次のステージに進んだのだ。


従来の作品とは違い、マルチプレイがないのは残念ではあるが、
Sekiroが目指した手に汗握る剣戟チャンバラはシングルプレイでしか出来ない体験でもある。
そしてそのチャンバラはとても楽しく、一種のリズムゲームにも思える。

アクションゲームというものは元来、ターン制バトルである。
敵が攻撃してきたら防御か回避、それから自分の攻撃、次は相手の反撃で…
とお互いが攻撃と防御を繰り返す。
出来が良くないゲームでは敵に無敵時間がついていたりして、
よくプレイヤーから「ターン制やめろ」などと揶揄される。
一方でそこを考え抜いた「Bayonetta」では攻撃しつつ回避が出来るという、
ターン制の境界線を壊す事に成功した、おかげでプレイヤーは常に攻撃し続ける快感を味わえる。
ではSekiroではどうなのか。
結論から言うとターン制からは逸脱出来ていない。
出来ていないのだが、その境界線を上手くぼかす事で対処した。
そしてそのぼかし方が非常に上手だった事が素晴らしい。


まずこちらが攻撃し続けると敵が強制的に反撃を行ってくるのだが、
その敵の攻撃をジャストガードで完封する事が出来、
ジャストガードのモーション・時間も短く、すぐに攻撃に移る事が出来る。
敵によっては下段攻撃を行ってくるのだが、それはジャストガードでも防げない。
代わりにジャンプで避ける事が出来るのだが、
ジャンプの後にすぐにこちらが攻撃に打って出ることが出来るし、敵のスタミナも減る。
もう一つ、突き攻撃も存在するのだが、これもジャストガードは出来ないが、
代わりに序盤に獲得スキルを使うと突き攻撃を否して、敵のスタミナを減らし、こちらが有利に経つことが出来る。
つまり敵の攻撃に対しての対処が全てこちらの有利に働くように出来ている。
こちらが回避や防御をしても敵が不利になり、尚且こちらのモーション・時間も短いので、
上記のターン制の境界線がぼかされ、ゆらいでいる。
だからSekiroのコンバットシステムはとても楽しいのだ。


ターン制について言及している人はネットを見ても本当に極少数しかおらず、
恐らくこの境界線の話をしている人は皆無のはず。
そして、外国人が作るソウルフォロワーに漏れず、Sekiroフォロワーも出てくるだろうが、
このターン制の境界線を理解出来る程のゲームデザイナーはいないだろうし、
Sekiroを超えるフォロワーは絶対に出てこないといえるだろう。
もし出てきたらご一報お願いします。


コンバットゲームであるが故、戦闘に関する話ばかりしたが、世界観とストーリーも良い。
まず一番気に入ってるのは世界観だ。
外国人が作る日本観とは違い、実際の日本人が忠実通りに世界を描いているおかげか、
当たり前である妖怪が跋扈している、これが嬉しい。
歴史ものに造詣が深いコーエーテクモゲームスが作った「仁王」でも忠実通りに妖怪を登場させている。
外国人が作る日本のゲームには勘違い日本ばかりで中国とごちゃまぜにされてるわ、妖怪が登場しないわと適当すぎるのだ。
いやまぁ冗談は兎も角、妖怪が登場する世界観というのは現代のゲームでは貴重なので純粋に嬉しい。


ストーリーだがフロム・ソフトウェアの作品はストーリーが難解な物が多く、
比較的わかりやすいとされるストーリーですら新参者では全く理解出来ない事もしばしば。
だがSekiroはムービーシーンも多く、そのムービーもセリフが多い。
登場人物も世界観や物語についてストレートに話してくれる事が多い。
マルチエンドながらどのエンディングも手堅くまとまっており、
所謂トゥルーエンディングに値するものは、
Sekiro:Shadow Die Twiceのタイトルとしてふさわしい美しい終わり方をしている。
世界観を使った続編は作れるだろうが、
この隻腕の狼と君主の話としては絶対に続きが作れない終わらせ方で締めたのも素晴らしい。
本作単体で完全完結しているというのは嬉しい点だ。
実際各所ではSekiroがGOTYを受賞しているのは頷けるし、
自分自身も受賞させたかったタイトルだった。


ただ手放しで褒められるかというとそうでもなく、
無意味で薄っぺらい引き伸ばされた中途半端な成長システムと、
バニラでボス戦をリプレイするモードがないというのだけがマイナスポイントか。
前者は割と致命的だし、後者は仕方ないといえばそうだが用意してほしかった。
だが、それを持って有り余る程の魅力を備えた本作は、
平成の終わりに気高き遠吠えを上げた。

  • ベストアートバイオレンスゲーム:Katana Zero

Sekiroに引き続き、またもや刀を使うゲーム。
だが、忍者のSekiroに対して、こちらはサムライのKatana Zeroだ!

2016年頃だろうか、あの「天国の塔」を作ったクリエイターの公式サイトを見ていると、
見たこともないスタイリッシュな絵の新作を制作しているという情報が乗っていた。
それから暫くして、Steamでの販売が決まった。
そんなこんなでローカライズも決まったりと、どんどん新情報が飛び出てくる。
2019年、初めて「Katana Zero」を見かけてから早数年、ついに本作が発売された。


大作ゲームの影にインディーズゲームあり…
本作は大作ゲームをも食らっていく超絶クオリティの傑作、ダークホースだったのだ。


ゲーム自体は2D横スクロールアクションで、主人公は刀とマップにおいてある投擲アイテムを使い、
一度食らったら即死という状況を切り抜けていく所謂死にゲーにあたるジャンルだ。
死んでもすぐにリスタート出来てリトライしやすいのも嬉しい。
敵は武器を当然持っており、ナイフや銃でこちらを殺そうとしてくる。
主人公は時間を操る能力を持っており、時間の流れを操りスローにする事ができる。
それで敵の動きを見切って、敵の弾丸を避け、弾丸を刀で弾き返して上手く進んでいく。
身も蓋もない言い方をすれば2Dにして近接のみで時間をスローに出来る「Hotline Miami」だ。
実際問題、フォロワーというか影響を受けているような点は多数見受けられる。


全体的にサイケデリックな雰囲気に、”何故他人を傷つけるのか?”のような問いもある。
主人公は薬物を摂取しており、それが世界観、ストーリー、ゲームプレイ全てにとても面白い良い影響を与えている。


「Hotline Miami」と違って、ストーリー自体は概ね分かりやすく、難解な箇所も少ない。
ストーリーを理解してもらおうという意思を感じられる。
何より製作者が捻くれていないので理解しやすいというのが大きいだろう。
この薬物を摂取した主人公の過去や彼を取り巻く環境などの謎の要素も物語を大きく引っ張ってくれて、
プレイしている間はとても惹きつけられるだろう。
ゲームシステムがストーリーに大きく食い込んでいる点も面白い。


本作はゲームデザインも素晴らしいのだが、世界観も良いしストーリーもとてつもない。
もっと詳しい内容を書き記したいのだが、事前情報なしで遊んで衝撃を受けてほしい一作。
ムダもなく隙がない完成度の高い超絶クオリティの作品だが、
唯一の問題は本作のタイトルが「Katana Zero」という事か。
この作品が「Katana Zero」ではなくKatana One、もしくはKatanaであればGOTYは総なめ余裕で受賞状態だっただろうか。

  • ベストVRアクションゲーム:Swords of Gargantua

刀、刀と来たら次も刀のゲーム、刀ゾーンだ!
というわけで本作は日本人が作ったチャンバラVRアクションゲームだ。

このゲームは敵の攻撃を上手く対処して剣戟を叩き込んでいく。
VRゲームの中でも、ゲームシステムレベルでプレイヤーが取れる動きの選択肢が多いのが特徴。

敵の攻撃は回避するのだが、ボタン+上半身を前後左右に反らすような動きをすると、
ゲーム内でステップ回避出来るのが非常に特徴的。
敵の攻撃を武器で防げばガードが可能、
それとは別に敵の攻撃に合わせて敵の武器にこちらの武器を叩きつけるようにするとパリィとなる。
まず敵の攻撃の対処だけで3種類の方法が存在する。


敵の攻撃を防いだりパリィすると敵のスタミナゲージが減っていき、一定時間スタンして攻撃のチャンスが生まれる。
そしてパリィに成功すると敵の体に弱点と呼ばれる緑色のワイヤーボールが表示される。
この箇所を上手く攻撃するとクリティカル攻撃となって、普通に攻撃するよりも大ダメージが与えられる。
弱点を攻撃すると別の箇所にまた弱点が出現する。
敵の弱点を攻撃しまくれば大ダメージのコンボを繋ぐ事が出来る。


敵を攻撃すると画面下部のSGゲージが溜まっていき、このゲージが最大まで溜まった状態で、
持っている武器に手をかざすとエンチャント状態となり、武器が発光し大幅に火力アップする。
「Dark Souls」で見たような光景、うーん、男のロマン。
また上記で説明した弱点が、スタミナゲージを減らさなくても常時出現するので一気に敵を倒すチャンスとなる。


武器は種類も豊富でイベントやアップデートでどんどん追加される。
片手武器から始まり両手で持つと攻撃力が増大する両手武器、
他にも手裏剣や投げナイフなどの投擲武器も存在する。
戦闘開始前に自由にセットして戦う事が可能だ、


このゲームには3つのモードが存在しており、
全100ステージを攻略するシングルモード、
最大4人で遊べる多数の敵から防衛目標を守り抜くHordeのようなマルチモード、
そして最新アップデートで登場した101Fのダンジョンを潜っていくアドベンチャーモードが存在する。


シングルは正直一般人がクリア出来るような難易度でもなく、
覚えゲーで言ってしまえばあまり良くできた作りではないかなり人を選ぶ出来。
クリアする為には只管リアルのプレイヤースキルを磨く事になる。
マルチモードは楽しいのだが一度遊べばもうそれで満足する内容。
だが、ダンジョンを潜るアドベンチャーモードは素晴らしい。
これ目当てに買っても問題がないレベル。

このアドベンチャーモードは最大4人で遊べるモードで、
ダンジョンに潜って最下層の101Fに居るラスボスを倒すのが目的なのだが、
初心者救済処置やRPG要素が存在する。


フロアをクリアすると、内容がランダムの3つのポータルが出現、
そのポータルはいくつか種類があり、
次のフロアに進む出口、デバフがかかるが一気にフロアを進む出口、
ショップ、バフ・デバフが貰えるルーレットが存在する。
フロアをクリアするとコインが貰えて、そのコインでルーレットを回したり出現したショップで買い物が出来る。
ショップでは武器や回復や一時バフを貰える消費アイテムが購入出来る。


フロアをクリアしていくと経験値が溜まりレベルアップする。
その際にランダムに選ばれた3つのバフが表示される。
HPアップや攻撃力アップ移動速度アップ防御力アップステップ移動距離アップなど…
何が出てくるかは毎回ランダムで強くなっていく。
このレベルはローグライクやMOBAのようにダンジョンに潜るたびに初期化される。
毎回異なるビルドで戦う事になる。
運が悪ければ火力を一切伸ばせない事だってあるし、
滅茶苦茶移動関連を引いてクソ早マンになったりと面白い。


もし死んでしまってもフロアクリア時やショップで購入した武器やアイテムと、
その時持っていたコインをロビー持って帰ることが出来る。
ロビーでは持っているコインを使ってアビリティを習得出来る。
HPや攻撃力、SGゲージ上昇量アップなどのステータス系から、
取得コイン増加やショップの割引なども存在する。
これらで獲得したアビリティは永続パッシブとなるので、遊べば遊ぶ程強くなる。


そして武器同士を合成すれば武器を更に強くする事が出来る。
最大+10まで強化でき、そこまで強化すれば火力は2倍近く変わる。
これらの強化を行えばかなり強くなる。
お気に入りの武器を見つけたら強化すると俄然楽しい。
またフロアを下れば下る程強い武器がドロップするので、
浅い階層で武器を集めて強化してから進むのか、
一気に進んで強い武器を獲得する戦略もありだ。


チャンバラが楽しく、遊べば遊ぶほど強くなるRPG要素、そしてマルチプレイ。
全てが楽しい。
マルチでは日本刀しか持たないサムライだったり、両手に盾を持ってヘイト稼ぎとパリィを行うタンクが居たり、デバフしか引かないマゾが居たり…
とにかく色々な人と戦略があり楽しい。


とにかくVRゲームの中で普通のパンケーキゲームと遜色のない、
システムレベルでのプレイヤーが選べるアクションの選択肢が多いのが特徴の本作。
他のVRゲームでは、防御もなく移動するだけや移動するだけしか手段がなかったりと、
そもそもが選択肢どころか手段すらないような中で、
これだけのアクションを用意しているのが好印象。
様々な敵や状況の中、その時々に最適なアクションを選択する楽しみがある。
VRでチャンバラをやる為に必要なアクションがシステムレベルで全て揃っている。
剣戟ゲームという観点だけで見るのであれば、他のゲームでも面白いものはあるが、
チャンバラをする事が出来るのは本作だけではないだろうか。

ローグライク風味なアドベンチャーモードはマルチプレイも楽しく、
これだけで数十時間遊べるレベルのボリュームと面白さ。
今年の一番楽しく熱いVRゲームだ。

  • ベストゲームデザイン:バイオハザード2:RE

「バイオハザード」シリーズは4で初めて遊び、5、6をメインに遊んでいた、
1・2・3はほんの少ししか触ったことがない所謂新参者に当たる。
「バイオハザード」といえばサバイバルホラーのジャンルに位置づけられているが、
4~6のサバイバル要素が薄くなり、シューター要素が濃くなった。
そして数年越しのナンバリングタイトルである7は初期のサバイバルホラー路線に近づいた。
アクションシューティングからサバイバルホラーへの胎内回帰が始まった。
そんな中、2のリメイクが発表・発売されたのだ。


本作で一番嬉しい点は間違いなくゾンビが強い事だろう。
ゾンビゲームといえば大量の群がるゾンビを一掃するのが醍醐味、
しかし本作のゾンビはその存在が驚異的。
ヘッドショットを当てていっても全然死なない。
1発は当然死なないし、2発当てても精々仰け反る程度。
3発当てるとようやく倒れる、
のだが、それは倒れただけで死んでは居ない。
再び攻撃を当てるか、暫くすればまた起き上がってきてこちらを襲ってくる。
5~8発程度当てればようやく倒す事が出来る。


取得できる弾薬には限りがあり、全ての弾を頭に当てたとしても弾薬が足りない可能性がある。
弾を外してしまうなら尚更だ。
そういう場合は足を狙って撃って、足を破壊すればいい。
そうすれば倒す事は出来ないが、無力化する事が出来る。
この場所はよく通るからゾンビは倒して、ここは通らないから無力化もしくは無視するなど、
取得できるアイテムに限りがあるからこその資源管理が楽しめる。

シリーズ恒例のナイフプレイも存在するのだが、
本作のナイフにはそれぞれ耐久力が存在し、使用し続けると壊れてなくなってしまう。
また、敵の攻撃を食らっても即座にダメージを受けずに、
ゾンビが襲ってくるモーションの間にナイフを使用してダメージを回避出来る。
シューティングにおけるボムのような存在だ。
ただし、ナイフはゾンビに刺さったままなので、そのナイフを回収したい場合はゾンビを倒して再回収しなければならない。
1体のゾンビを相手にするだけでも大変なのだ。


次に楽しいのはインベントリだろう。
本作は持てるアイテムの数が非常に少ない。
少ないアイテム所持枠の中で武器・弾薬・回復ハーブ・キーアイテムと全てを管理しないといけない。
武器によっては枠を2つ消費する物だって存在する。
アイテム所持枠を増やすバックパックも存在するが、あまり見つからない。
いらないアイテムはアイテムボックスに収納しなければいけない。
探索して新しいアイテムを見つけても所持枠が空いていなければ拾えない。
所持アイテムを減らして探索すれば、いざ戦闘になってしまった時に辛い目に合う。
このアイテム管理のバランスもとても楽しい。
チキンプレイで行くならアイテムを拾ってボックスにまで移動して収納。
これを繰り返しても良い。


そんなこんなでゾンビがうようよ居る警察署を探索していくのだが、
このゲームでとても優れているのがマップだろう。
本作のマップ機能はとても優秀で、
入った部屋、まだアイテム・謎が残されている部屋、入ったことがない部屋と、
それぞれ別の色で表示してくれる。
更にはマップにまだ解いていない謎とその場所、
アイテムを取り逃しているとアイテムの位置まで表示してくれる。
インベントリがいっぱいで回収できなかったアイテムもマップに表示していてくれるので取り逃す事もないという親切設計だ。


そんなこんなでゾンビと戦いアイテムを集めて戦力を強化していくわけだが、
本作はアイテムは有限、という事はゾンビも有限という事でバランスを取っている。
探索しつつゾンビを倒していると、最早警察署を散歩するだけの事態になってしまい、
ホラーゲームなのに敵が登場しないという安心感を得てしまう。
そんな状況に一石を投じるのが、
全身黒コートに白塗りの顔をした巨漢、タイラントの存在だろう。


こいつは常にマップをウロウロしており、
プレイヤーの足音や物音を聴きつけるとこちらに向かって移動を開始する。
ゾンビやリッカーなどという化け物と戦闘して追い詰められてあたふたしていると、
このタイラントが接近してきてボコボコにしてくる。
何ならこいつは不死身で倒すことは出来ない、只管追われる事となる。
精神的な恐怖とは別に肉体的な恐怖も味わう事となるのだ。
このタイラントの存在が非常に良いスパイスになっており、
ゲームに慣れてあらかたマップを探索しきり、
敵も居なくなってきた頃に登場するバランスが素晴らしい。

ただタイラントとの戦闘は全くの無意味、
戦闘して火力を叩き込めば倒せる、倒せるのだがもののすぐに立ち上がってくる。
タイラントとの戦闘は資源をただ消耗するだけになるので、
3の追跡者のように撃退する事に少しは旨味はほしいなとは思う。

遊び始めた時はアイテムは持てないわ、弾薬や回復はないわ、武器の火力は低いわと散々だが、
ゲームを進めていけばアイテム所持枠は増えてかなり楽になるし、ガンパウダーで好きな弾薬を制作でき、
更にはヘッドショットすればほぼ確実にゾンビの頭を吹き飛ばす事の出来るショットガンなど、
様々な面で強く有利になっていく。
初期状態だろうと上記の親切で便利なマップが存在するので、
探索自体にストレスは全く感じないのも嬉しい。


本作はゲームのお手本のような作品で、遊んでいてストレスもなく、無駄な要素もない。
かの名作「バイオハザード2」のリメイクという大きなプレッシャーを背負いながらも、
完璧な作品を作り上げたカプコンには頭が上がらない。
PC版であれば敵やアイテムがランダム化されるランダマイザーMODなども存在する。
是非遊んでほしい一作だ。

  • ベストストーリーゲーム:みにくいモジカの子

さて、ニトロプラスをご存知だろうか。
かの「沙耶の唄」や「機神咆吼デモンベイン」「君と彼女と彼女の恋。」などを生み出したアダルトゲームメーカーで、
他にもアニメ「魔法少女まどかマギカ」や、「仮面ライダー鎧武」なども一部手掛けている。
アダルトゲームながら、アダルト描写以外の銃やロボットなど別の部分にも気合を入れており、
在籍しているシナリオライター達が大体ヤバい話を執筆しているのが特徴だろう。
そのニトロプラスが現在最後に出した新作が本作「みにくいモジカの子」だ。

本来このBlogではアダルトゲームの類は全く扱うつもりはなく、
このタイトルの名前を上げる事すら躊躇した。
しかし、上記の作品は知名度はあれど、この作品の知名度は少し低い方か。
知名度に反して完成度がとても高く埋もれるには惜しい。
少しでも多くの方に手にとってもらう為に名前を上げた。
自分の文章力と情報の開示量で魅力と感じてもらえるかはわからないが、
それでも自分は伝えなければならない。

アドベンチャーゲームというと基本的にはボリュームたっぷりで20~30時間。
下手をすれば100時間コースのゲームも存在するが、
本作は普通に遊んでも10時間程度で全てのルートとトゥルーエンドの到達も可能だ。
プレイ時間を確保できない現代人に向けた究極のスタイルだと思っている。
これを見るとプレイ時間が短いという事はボリュームがなく、
あっという間に終わってしまう、と考える人も居るだろう。
本作は確かに短いのだが、ボリュームは盛りだくさん。
具体的にはプレイ時間当たりの話の濃密さが異常で、
トゥルーエンドを終えたときには数十時間規模のゲームを終わらせた並の感覚が待っている。
話自体もこれまでのニトロプラス作品に例を漏れずとんでもない物となっているので、
絶対にネタバレや事前情報を入れずに遊んでほしい類のゲームだ。


本作の主人公は現役の高校生。
彼は第三者から見ればとても醜い容姿であり、人のそれから逸脱しているようで、
性格も良いとは言えず、その容姿と性格からいじめにあっている。
だが、彼には”モジカ”と呼ばれる能力を持っている。
これは人の顔を見れば”相手の思っている事が文字として浮かび上がる”というものだ。
”モジカ”、文字化。
そんな能力があればどんなに素晴らしいだろうか。
しかしこの主人公に関しては逆だ。
相手の顔を見て思っている事を”モジカ”すれば、自分に対して思っている事がストレートに浮かぶ。
例え相手が上辺では何を言っていても、どんな表情をしていてもだ。
だから主人公は自分が傷つくくらいならと、
常に相手の顔を見なくて良いように地面ばかりを見ている。
そんな主人公がとある出来事をキッカケに、
この”モジカ”の能力を使っていじめられた相手に復讐していくというのがあらすじだ。


このゲームの面白い所は、常に主人公の一人称視点で物語が進む。
そのためプレイ時間の殆どが地面と相手の足元しか映らない点だ。
シナリオライターが”はい””いいえ”という選択肢を選ぶのは安直すぎるという考えから、
もっと直感的な分岐に出来ないかという事を本作で実行する。
それは自分が頭を上げるか、上げないかで分岐するという物だ。
たったの頭を上げるか上げないかで多数のルートに分岐するさまは奇妙である。
ゲームプレイ自体は”はい””いいえ”と何ら変わりないと言うのに、
選択肢を選ぶという行為が存在しないだけで没入感は増して、そのプレイは楽しく奇妙となる。


そして所謂トゥルーエンドが2周目以降・特定のEDを見てから、などのフラグ管理が行われておらず、
手順さえ知っていれば最初からトゥルーエンドに到達出来る。
無論、その道程はとても厳しく一度でも分岐を誤れば到達は無理だ。
シナリオライターが「もし初見でトゥルーに到達出来た人はご一報を」とまで言っている始末。


本作はタイトルもそうだが、主人公の境遇、いじめや復讐という題材。
一部のルートでは直接的に生々しい表現も存在する。
生の面、負の面、共に一生心の中に残り続ける醜い化け物のような子だ。
この作品は地獄を具現化したような作品だ。
どこにも安息の地は存在しない、始まりから終わりまで地獄の救われない物語だろう。
しかし、そんな醜い世界でもがき苦しみ、あがいていくからこそ人間は美しい。
醜いからこそ美しい。
全ては人間賛歌、人は生きる為に生きる、生きたいから生きるのだ。
タイトルの意味がわかった時、醜い地獄のようなこの作品を、
我が子のように一生、心から愛する事が出来る。


本作には非常に恐ろしいトラップが2つ仕掛けられている。
全ては仕組まれており、主人公とプレイヤーはいつの間にか闇のプロジェクトの中枢に引きずり込まれている。
その1つ目の恐ろしいトラップからは絶対に逃れられない、そういう運命なのだ。
プレイしていると、きっと恐ろしいトラップから逃れる勇気が足りないかもしれない。
そんな時は全てをリセットし、様々な可能性を試してほしい。
きっと、過去が勇気を与えてくれる。
過去の扉を開ければ、きっと恐ろしい悪夢のような魔の手から逃れる事が出来る。
もし過去が未来を与えてくれた時、真理の扉を開く事が出来るだろう。
その先に待つ2つ目のトラップは、心していてほしい、ただ覚悟をしてほしい。
そして全てを超えた先に待つ未来の扉、それを開く鍵は…
ただ、信じてあげてほしい。

  • ゲームオブザイヤー:Zero Ranger

2019年のゲームからGOTYを選出するならば、
恐らく殆どの人が「バイオ2RE」か「Sekiro」を選ぶだろう。
自分自身そのつもりではあった。
完璧すぎる無駄のないゲームと、極限までに戦いに特化したゲーム。
最早好みの差で選出されるものだろう。
しかし、年末には魔物が住んでいる。
それもインディーズゲームという不意打ちのような形で眼前に立ちふさがった。
それがシューティングゲーム、「Zero Ranger」だ。

まず間違いなく「Zero Ranger」なんてタイトルは聞いたことがないだろう。
「バイオ2RE」や「Sekiro」なんかよりも面白いの?出来は良いの?と思うかもしれない。
確かにこのゲームは両者2作に比べると開発規模もジャンルも全然違う。
一概にどちらか、というのは決められない。
そもそも自分はシューティングが超絶に下手くそ。
比較的難易度が低いとされるシューティングを何度遊んでも1周目すらノーコンティニューでクリア出来ない。
更には2周目に入る事も出来ないなど、典型的な下手の横好き。

なのだが、本作には2つの魅力が存在する。
下手の横好きですら引きつける強烈な”演出”という魅力が存在する。
そしてもう1つは本作を遊んだ時に”ゲーマーへの挑戦状”を叩きつけられた気分になった。
このゲームは絶対にクリアしないといけない、そんな義務感や脅迫観念に近いものだ。
この感覚は2019年内で言えば「Sekiro」を遊んだ時だけだったし、
その叩きつけられた気分のレベルで言えば「Sekiro」をも遥かに凌駕する物だった。


本作はジャンルで言えばオーソドックスな”縦シューティング”なのだが、
少し”弾幕シューティング”に片足を突っ込んでいる。
雑魚戦やステージの途中では弾幕は張られず、プレイヤーは爽快感を味わえ、
ボス戦では”CAVEシュー”程ではないが、弾幕を張ってくるので緊張感がある。
その緩急の付け方が上手い。

このゲームの特徴は?と聞かれるとまず最初に演出が上げられる程だ。
縦シューティングという媒体を生かしたギミックなども用意しておりとても楽しい。
ストーリー面での演出もまぁとんでもない物で、
こればっかりは事前情報なしで是非ネタバレに触れずに遊んでほしい。
ただし日本語が存在せずに、英語を読まないといけないのはかなり渋い。
プレイ中は何となくわかるし、Steamガイドで有志の方が日本語翻訳+補足の記事を上げてくれているのが幸いか。

ストーリーとしては”Green Orange”なるエイリアンが地球に攻めてきて、
それを撃退する為に飛び立った1号機とそのパイロットだが、
戦闘中に行方不明になってしまう。
その報告を受けた2号機と3号機のパイロットが、”Green Orange”の撃退と1号機のパイロットの捜索を行うという物だ。

システムとしては上記でも言った通りオーソドックスな内容だ。
ゲーム開始時に2つの機体を選択する。
使用するボタンは移動キーと3つのボタンしか存在しない程だ。
1キーで正面への射撃、2キーで左右、もしくは後ろへの射撃。
3キーで特殊射撃が可能だ。
本作で少し変わっているのが初期では1キーの通常射撃しか使えずに、
ボス戦を突破すると二者択一のアップグレードを獲得する。
その際に2キーならば左右攻撃か後ろ攻撃を選び、
3キーならばそれぞれ特性の違う特殊射撃武器を選ぶ事となる。
また最初に選ぶ2つの機体によって1・2・3それぞれの武器の性能が少し変わってくる。
自分の好みの機体、アップグレードを選択して有利に戦える。


シューティングと言えばデスペナルティが存在する物もあるが、
本作にはデスペナルティは存在せず、被弾・死亡する事でパワーアップがなくなるなどはない。
残機がなくなりゲームオーバーになっても、それまでに稼いだスコアが集計され、最大コンティニュー回数が増えていく。
更に言うと本作はいつでも到達した面から再スタート出来るステージセレクトがあり、
長丁場で難易度の高い最終面ですら、コンティニュー回数を最大にした状態ですぐに挑む事だって可能だ。
逆に言えば好きな時に中断・再開が出来るという機能でも嬉しい。
普通のシューティングならば一度遊べば完全にクリアするまで中断は出来ず、
1時間程のまとまった時間が必要だが、本作にそれはない。
ゲーム自体の難易度は高い部類に入るのだが、初心者に優しい作りになっている。

システム面は初心者に優しく、自由度もあり楽しい。
では肝心のゲーム部分はどうかというと、まずステージが楽しい。
それぞれのステージが別のゲームかと思うくらいに差別化されている。
1面はスタンダードなステージだが、2面になると地形で殺してくる昔のシューティングのような物になる。
各ステージがバラエティ豊かで濃密すぎるのだ。
各ステージやボスなどには元ネタがあり、シューティングに造詣があるなら尚楽しめるだろう。


シューティングといえば音楽も良いのが最早お約束。
本作も例に漏れずBGMがとても良い。
8bitと16bitの間の子のようなスタイルのゲームなせいか、
BGMもMIDI音源をそのまま流したような曲なのだが、
それが良い意味でノスタルジックを刺激する。
メロディラインも美しかったり熱かったりと、ゲームにマッチしている。
最初に言った演出もストーリーの流れやBGMとの相乗効果でとても盛り上がる。
特に機体に秘められた力が発現するシーンは激アツ物だろう。

さて、再び演出の話に戻るのだが、
シューティングと言えば所謂2周目が存在するが、
このゲームの2周目は単純に理由もなく遊ぶのではなく、
ストーリーの進行上、とても自然な流れで突入する事になる。
そのスムーズさは2周目に入った瞬間驚いてしまう程。
2周目からは全てのBGMすら新しいものに切り替わっている程の力の入れようだ。
2周目の最終面のステージ開始という演出を見た時には思わず涙ぐんでしまい、
まさかシューティングのストーリーと演出でこんなに心が揺さぶられるとは思わなかった。


2周目自体も難易度が高くなっているのだが、こちらもステージセレクトで2周目のステージから個別に開始できるのも嬉しい。
何度でもコンティニューしてもいい、2周目のラストまで到達してほしい。
2周目のラストまで到達すると、OPデモの意味が理解出来るだろう。

本作は難易度が高いが初心者に優しい作りになっていると言った。
しかし真の意味での初心者はある意味切り捨てられているのかもしれない。
勿論何度でも挑戦すればクリア出来るのかもしれない、しかしその過程がとても苦しいものだ。
ラスボス戦の曲名が「Despair」の名を関する通り、
本作は全体を通して絶望的なゲームとなっている。

言ってしまえば難易度と感覚で言うならば「Undertale」の最終ルートのボスである”Megalovania”と対峙したような感覚を彷彿とさせる。
下手くそな自分ですら”最後”までクリア出来たのだ。
出来ると思ったからやる、”ゲーマー”でなければクリア出来ないだろう。
逆に言えば”ゲーマー”ならきっとクリア出来るのだ。
最後までクリア出来なくても良い、この価格でこの密度でこの演出はとてつもない出来だ。
とにかく随所随所にサプライズが大量に仕込まれており、プレイしている間は飽きさせない作り。
シューティングが苦手な人にこそ入門作としておすすめしたい。
”ゲーマー”への挑戦状を叩きつけ、本能を揺さぶられ、心をも揺さぶる本作がGOTYに決まるのは当然だろう。


あなたが”ゲーマー”であるのならば、叩きつけられた挑戦状を受け取り、
たった一度だけ訪れる”最後の結末”まで見届けてほしい。
全てを超えた後に待っている新世界で会いましょう。

0 件のコメント:

コメントを投稿