2022年1月20日木曜日

【ネタバレなし】Omoriレビュー:己の罪と向き合うという事は、多大なる勇気が必要


2014年に発表されたサイコホラーひきこもりRPGのOmori。

約8年の歳月をかけてようやく日本でも遊べるようになったのでクリアしました。

Spoilerに関しては極力触れないようにします。


Omoriのここが良い!

・丁寧なストーリーがプロットレベルで良い

・挿入されるアニメーションが種類豊富で終盤は特に凄い


まずこのゲームにはホラー描写が含まれています。

そしてホラーが苦手な方へ伝えたい事があります。

まずはホラーが苦手な方へ、ホラーの誤解を解いておきたいという事。

そもそもホラーは勘違いされているジャンルである。

ホラゲ実況や映画のせいで勘違いされているが、ホラーには2種類存在する。

一つは初期のバイオハザードや呪怨などに分類される所謂「お化け屋敷」のホラー

これはただ単に見ている人を恐怖・びっくりさせるだけの悪意のある恐怖。

急に大きな音を出したりしてびっくりさせるジャンプスケアなどがこれにあたる。


対してもう一つのホラーは背景などのロアが存在するホラーだ。

これはどういう事かというと、リングという映画がある。

あのテレビから出てきて人間を襲う貞子と呼ばれる女の怪異だ。

あれはテレビから出てくるのが怖いというのが本質ではなく、

貞子には悲しい過去があって、それがこの世に恨みを持つ怨霊となって、DVDなどを媒体に恐怖をばらまく怪異になったという経緯がある。

そう、生まれる過程が存在する。


ゲームでいうとサイレントヒルもそうだろう。

ゲーム中に出てくる怪物やアイテムは、主人公の罪の意識やトラウマから生み出された存在で、

ただ恐怖の対象なのではなく、その存在全てに意味を持たせている。

というのがわかると、それがただ怖がらせる物ではなく、こちらに何かメッセージを伝えようとしているのがわかる。

台湾のホラーゲーム「返校」と「還願」も全く同じタイプで、

出てくる全ての存在がメッセージを持たせているもので、

特に「還願」に関しては最序盤からそのメッセージが汲み取れるのでホラーとして認識する事すら出来ない。

SIRENに関しては全てのネタが割れてしまえばホラーどころかオカルトでもないし最終的にSFだという事まで発覚する。

面白いホラーというのは、その背景に潜むロアを表現する為に化け物や怪異という形を取っている物だ。


ホラーが苦手な方は恐らく最初のお化け屋敷タイプが苦手で、それのせいで他のホラーもダメになったのだろう。

悪意のあるお化け屋敷タイプと、意味のあるメッセージが存在するホラーの見分けがつけば、

きっとホラーも大丈夫になるはず。

そして、Omoriはその後者である全ての存在に意味のあるメッセージとして表現されているホラーだ。

怯えずに操作キャラのオモリと一緒になって、恐怖に立ち向かって克服いってほしいと思う。

大丈夫、きっと怖くない。




閑話休題。

ここからはようやく本題のOmoriのお話。

大前提として出回っている評判程の出来ではないという事。

映画ストーリーとしての出来はとても良いのだが、反面ゲームとしては微妙と言わざるを得ない。



よく出来たゲームというのはゲーム内の要素が歯車のようにうまく噛み合わさり、全ての歯車が回っているもので、

言ってしまえば死んでいる要素がない、全てが作用しているゲームだ。

面白いゲームとか好きなゲームと、よく出来たゲームはまた違うもので、

Omoriは前者に当たる。

レベルを上げなくても全然進めるし、戦闘にある感情システムなんかも全く使わずにクリア出来る。

いい方向で捉えると難易度が低い、悪い方向で捉えるなら完成度が低い。

ストーリー特化で考えるならこれは良い意味でも悪い意味、どちらにでも捉えられる。



そしてゲーム的なテンポ悪い。

これがどういう事かというと、基本的なゲーム部分に多くのウェイトが仕込まれていたり、

戦闘中のテンポが非常に悪く、スロー再生しているんじゃないかという感じになっている。

クリアまで15~20時間かかると思うが、これはボリュームが多いのではなくテンポの悪さから来ている物。

遊んでいて辛いと感じる箇所も多かった。

反面、引っ越し作業のくだりなどは意図的に退屈に作っている箇所もあるし、うまく作用もしている。

意図的な部分は良いが、それ以外の全体的なテンポさえ良ければもっと良かった。



しかし本題はここから。

恐らくこのゲームに求めているのはストーリーであり、魅力的なキャラクター達であるという事。

実際にストーリーは出来の良い物だし、魅力的なキャラクター達が揃っている。

しかし、その大半は虚無の世界を冒険であり、

虚無の世界での冒険は操作キャラのオモリやプレイヤーにとって殆ど意味のない逃避行に過ぎない。

この世界のキャラクター達がいくら良くても全てどうでもいい物が明らかになる。

ギャグシーンなどでも一切笑えなくなってしまうし、キャラクターが深堀りされても凄く反応に困ってしまう。





では虚無の世界を冒険する価値がなくなるか、というとそうでもない。

明らかになった時点で、オモリがこの世界を冒険する理由は恐らくプレイヤーからはなんとなく察せられる。

ココに関しては凄く良く出来ていると思う。

のだが、その割には冗長な展開が多く、ニチアサで言う所の本筋が絡まない回がずっと続くような物だ。

プレイヤーが期待しているのはオモリ周りの背景に潜むロアであるし、実際そこがとても良かった。

しかしオモリ周りのロアが語られるのはごくわずかな時間である。



ストーリーに関しても、ゲームではあまりないが映画ではよくあるようなストーリー展開で、それ自体の出来は良い。

そこに日本のゲームのキャラの良さをミックスしたので面白くないわけもなく、

キャラクターの良さが生きるシナリオだった。

しかし、ありがちと言えばありがちなので、「ひきこもりRPG」らしくもっと捻くれてほしかったという印象は否めない。

終わり方も非常に余韻をもたせた物で見応えもあった。



ゲームとしては手放しで褒めるような出来ではないが、ストーリーを味わう作品としては良く出来ている。

極めつけは、ゲームの中でレベルを上げても最終的に何の意味もない事。

これに関しては完全に意味のある仕様であり、開発の意図している所。

ゲームとしてはダメなのだが、ストーリーとしては完璧すぎる箇所なので大好き。

逃げ続けても何の意味もない、最後には帰らないと行けないというメッセージなのだろうか。



記事では結構Disの方向ではあったが、あくまでネットに漂う手放し絶賛意見に対してのバランスを取る為のものである。

決してこのゲームがダメなのではなくて、誰もが感情がぐちゃぐちゃにされる過剰に持ち上げられる神ゲーではないという事が言いたい。

神ゲーでもないので全員がやる価値があるゲームでもないが、

少しでも興味がある人が遊べばとても心が動かされる素晴らしいタイトルで名作の類でも
ある。

丁寧な作品を求めている人にはおすすめの一本である事は間違いない。



























































ところで、オモリって誰?

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