2022年9月26日月曜日

キングダムハーツはヴェルサス13の思念ではないという話

20周年というタイミングで、全世界待望のキングダムハーツ4が発表された。
シリーズを追っている人は予想通りであり、知らない人は驚く内容の映像。

そして、シリーズを追っていようが追っていまいが一つ思う事がある。
「これ、ヴェルサス13じゃん!!!」

3の時点で散々騒がれていた事ではあるが、今回公の場に出る事によって更に騒がれてしまった。
というわけで散々結び付けられるヴェルサスの思念という説を否定するお話をします。
まず第一にキングダムハーツとヴェルサスが何故結び付けられたのかという事。
キングダムハーツ3のトイ・ストーリーの世界に訪れた際に超絶美麗なプリレンダムービー流れる。
オサレな衣服を身にまとった4人の男が、囚われた女性を助ける為に戦うムービーだ。
作中では「Verum Rex」という新作ゲームの宣伝PVという名目で流れ、
トイ・ストーリーのキャラクターがこのゲームのファンという設定だ。
作中ではVerum Rexの主人公であるヨゾラがソラに似てるだのリクに似てるだのという話があったが、
あくまでFFっぽい何かのムービーが流れるというただのパロディで終わる。

はずだった。

事態が進展したのはキングダムハーツ3の発売から二週間後だ。
このシリーズは特定の条件を満たすと次回作以降の展開を匂わせるイメージムービーや後日談が見られるシークレットムービーがお約束になっており、
キングダムハーツ3は発売から二週間後にアップデートでシークレットムービーが追加された。
その内容は3本編のラストでKH世界から存在が消えてしまったソラの行方がわかるという物なのだが、
そのソラが行き着いた先は我々が見慣れたコンクリートジャングル、東京。
ソラは見知らぬ街、東京を歩いて散策する。
リクも同じく新宿で目を覚まし、街を散策する。
そして、ヴェルサス・15を遊んだ方ならわかるであろう例のピアノのイントロらしきものが聞こえた直後、
新宿都庁の真上に座っている人物が遠巻きから映し出される。
アップになるとそこにはゲームキャラクターであるはずのヨゾラが座っており…という衝撃的な内容だった。
そう、例のピアノの曲とはヴェルサス・15のメインテーマであるSomnusである。
ただのパロディと思われていた存在が実際に存在しており、キングダムハーツ世界の根幹を揺るがす事となった。

それからネットではヴェルサスの思念だの散々騒がれる事となり、アルティマニアでも公式で弁明がなされる程となった。

それから1年後、DLCであるReMindが配信された。
キングダムハーツ3を締めくくる最後のエピソードである裏ボス戦でヨゾラが登場。
ソラとバトルを繰り広げる。
あまりの強さの為に敗北専用ムービーまで用意されており、敗北ムービーはヨゾラに負けたソラがヨゾラによってクリスタル化させられ、ヨゾラは現実で目を覚まし車内に居る。
そしてキングダムハーツ1の冒頭で流れた「俺にはわからないんだ、この世界が本当に本物なのか、そんな事考えたこともなかった」
というセリフをソラとヨゾラで交互に読んでいくというもので終わる。
そして勝利エンドではソラに敗北したヨゾラが自分の力はまだ必要がないと判断し、現実世界で目を覚ます、のだが、
車内で目を覚ましたヨゾラが運転手に声をかけられ外を見て、
「俺にはわからないんだ、この世界が本当に本物なのか、そんな事考えたこともなかった」
の敗北時と同じセリフをソラとヨゾラが交互に読んだ箇所を逆に読むという演出で終わる。
その車内でのシーンの構図、セリフがまんまヴェルサスのトレーラーそのものだった事から、
改めてヴェルサスの思念という叩かれ方をしたのだった。


さて、ここからが本題でヴェルサス13の思念ではないという話。
まずFF13ヴェルサスはFF13・零式と連なるファブラノヴァクリスタリス神話という共通の神話を元にした作品群の一つだ。
生と死をテーマにした神話をそれぞれの作品がそれぞれの角度で解釈するという物。
しかし開発の長期化からヴェルサス13はディレクターや開発体制が大幅に変更され、ガワだけが同じで中身は別物となったのは有名だろう。

FF13シリーズは世界そのものが死を迎え、人間も星も全て死滅、死を超えて転生し生まれ変わる。
生まれ変わった先は我々が住む今の星、地球となるという落ちを描いた。
そして流出したヴェルサス13のプロットでは現実を下地にした地球の物語で、最終的に全員が死を迎え、自然溢れる幻想の世界にノクティスが舞い降りて終了する形となる(らしい)

FF13が死を通して幻想から現実に、ヴェルサスが死を通して現実から幻想にたどり着く対を成す形となっている。
FF15初発表トレーラーにおいても対を成す発言は存在しており、13とは意識的に対極になるよう作られている事がわかる。
キングダムハーツも幻想の中に現実が存在する世界観であり、ヴェルサスと対をなすような形になっている。


そしてノクティスを生み出した野村Dが好きなキャラを聞かれた時にクラウド・ソラ・ノクティスを上げているが、将来性を期待するという言葉しか残していない。
ノクティスに関してはラテン語で夜を意味しており、ソラとも対をなす形となっている。
そして満を持してヨゾラの登場、名前もそのままであり見た目の雰囲気などもその通り。
(因みにだが、ヨゾラの靴の裏とノクティスの靴の裏のテクスチャがほぼそのままなのは面白い。)


そしてキングダムハーツでは虚構の世界(裏の世界)と呼ばれる作品外に位置する非現実的な存在が語られた。
その世界はクァッドラトゥムと呼ばれる東京や新宿が存在する世界だ。
また上記の「俺にはわからないんだ、この世界が本当に本物なのか、そんな事考えたこともなかった」というセリフ。
ソラ達からすればキングダムハーツの世界が現実のはずだが、もう一つヨゾラ達の世界が現実として存在している。
ヨゾラ達からすれば自分たちの世界が現実のはずだが、もう一つキングダムハーツの世界が現実として存在している。
それはファブラノヴァクリスタリス神話で描いた対をなす世界、幻想と現実のそれに近い。
生と死がひっくり返ってどちらが本当なのか?というのを描くのだ。
事実、キングダムハーツ4のトレーラーでソラ達からすればヨゾラの世界は死の世界という事が言及された。
つまりヨゾラ達からすればキングダムハーツの世界が死の世界だ。
意図的な対を匂わせている。

野村Dのコメントも併せると、本来ヴェルサス13はノクティスが死亡し、キングダムハーツ世界へ転移、合流する手筈だったが
スタッフ変更やらプロット変更により使えなくなってしまった為、ヨゾラという代替えキャラクターを生み出したというのが正しい
なのでヨゾラという存在はヴェルサスの思念ではないという事である。
あくまでノクティスの代わりでしかないというのが真相だろうか。

ただキングダムハーツ3自体がヴェルサス13がやろうとしていたファントムソードやシフト移動等々など気付かないレベルでゲームプレイとして落とし込んでいるので、
そういう意味ではキングダムハーツはヴェルサスのリベンジ、思念とは言える形になっているし、
勿論ノクティスが潰されたのは野村Dとしては悔しい物だろう。
事実キングダムハーツ4のトレーラーで「自分の望む結末でなかったと絶望するなら、他の世界に退場すればいい。選択肢は無限にあるはずだ」と明らかにノクティスとヨゾラを匂わせたセリフを使っているのもそういう事だろう。
しかし、ディズニー社ともめちゃくちゃ話し合って作っているキングダムハーツで、
自分自身の作品の復讐としてこのような展開は出来るはずもなく、ただの野村の自由帳でないのは明らか。
明確なプロットラインに基づいて作られている。

もしヴェルサスが世の中に出ていればおまけ出演ではなく、ディズニーのキングダムハーツとスクエニのファイナルファンタジーが合流し、
現実のファイナルファンタジーと虚構のディズニーが入りまじりどちらが本当なのか?という問いを行うというとんでもないコラボになっていた。

Verum Rexというゲームは実際に作る予定があり、キングダムハーツ4かVerum Rexの制作かを迫られ、
皆ソラの行方が気になるだろうという事で4を優先した。との事で、
キングダムハーツ4の次はVerum Rexというキングダムハーツとは関係ない一つの単体のゲームが出る事が約束されている。
なので本来のプロットから外れているわけではないのだろうが、
FFとディズニー、これを綺麗に風呂敷を畳めるならビデオゲーム界の歴史に名を刻む事となっていただろう。
それが叶わなくなったのは一人のファンとしてとても残念であり、そういう意味ではファンがヴェルサスの思念にとらわれており、
ファンが一番ヴェルサスの思念と化しているという事だろう。

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